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チオトロピウムのミスト吸入薬でCOPD患者の死亡リスクが52%上昇

チオトロピウム製剤は日本国内でも広く使われている慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の治療薬(スピリーバ)です。今回、医学雑誌BMJにチオトロピウムに関する研究報告が掲載されました。

BMJとはイギリス医師会雑誌(British Medical Journal)の略称で、1988年からBMJが正式名称となっているイギリスの医学誌である。British Medical Associationが監修し、BMJ Groupから発行されている。BMJ Groupからは他にも24種類の医学専門雑誌が発行されている。 国際的にも権威が高く日本でも医師であれば必ず読んでおくべき雑誌と言われている。 世界五大医学雑誌などと呼ばれる代表的な医学専門誌の一つである。


BMJ誌から
チオトロピウムのミスト吸入薬でCOPD患者の死亡リスクが52%上昇
 慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に長時間作用型抗コリン薬のチオトロピウムを投与すると、呼吸困難が軽快し増悪リスクも低下する。しかし、近年登場したチオトロピウムのミスト吸入製剤は患者の全死因死亡リスクを有意に高めることが明らかになった。米Johns Hopkins大学医学部のSonal Singh氏らが、メタ分析の結果をBMJ誌2011年6月18日号に報告した。

 チオトロピウム吸入薬には利用可能な剤型が2種類ある。粉末薬を吸入器にセットし噴射ガスを用いてエアロゾル化するタイプと、ミスト吸入器を用いて吸入液を霧状にするタイプだ。

 著者らは、チオトロピウム自体がCOPD患者の心血管リスクを上昇させる可能性を示した研究があること、安全性に関する懸念が高まってきたこと、ミスト吸入器を用いると、患者は粉末薬を用いた場合より高濃度のチオトロピウムに曝露する可能性があることから、チオトロピウムのミスト吸入薬使用のリスクを全死因死亡に注目して分析することにした。

 Medline、Embase、製薬会社の臨床試験登録、米食品医薬品局(FDA)のウェブサイト、ClinicalTriales.govに2010年7月までに登録された無作為化試験の中から、COPD患者を登録した無作為化並行群間試験で、ミスト吸入器を用いてチオトロピウムまたは偽薬を30日以上投与しており、死亡率を報告していた研究を選出。固定効果モデルを用いたメタ分析を行い、全死因死亡の相対リスクを推定した。

 5件の無作為化試験が条件を満たした。それらはすべて二重盲検試験で、計6522人を登録し、3686人をチオトロピウムミスト吸入薬(用量は5μgが2839人、10μgが847人)、2836人を偽薬に割り付けていた。投与期間は2件が12週間、3件は1年間だった。

 チオトロピウムミスト吸入薬は死亡リスクの有意な上昇と関係していた。全死因死亡は、チオトロピウムミスト群の3686人中90人、偽薬群の2836人中47人で、相対リスクは1.52(95%信頼区間1.06-2.16、P=0.02、不均質性を示すI2=0%)になった。

 どちらの用量も有意なリスク上昇を示した。10μgの相対リスクは2.15(1.03-4.51、P=0.04、I2=9%)、5μgは1.46(1.01-2.10、P=0.04、I2=0%)で、用量反応関係の存在が示唆されたが、5μg群と比較した10μg群の相対リスクは1.23(0.66-2.30、P=0.51)と有意差を示さなかった。

 1年間追跡していた3件の研究のみを対象に分析しても、チオトロピウムミスト群の死亡の相対リスクは1.50(1.05-2.15)と変化しなかった。

 5μgの害必要数は124(52-5682)で、124人が5μgチオトロピウムミスト吸入薬を使用すると過剰死亡が1件発生すると推定された。

 チオトロピウムミスト吸入薬がCOPD患者の死亡リスクを上昇させることが示された。現在、粉末吸入薬とミスト吸入薬の有効性と安全性を直接比較する臨床試験が進行中で、その結果が明らかになるまでは、ミスト製剤を処方する患者にはリスクについて説明すること、心血管リスクを抱えた患者へのチオトロピウムミスト吸入薬の処方には特に注意することが必要だ、と著者らは述べている。

 原題は「Mortality associated with tiotropium mist inhaler in patients with chronic obstructive pulmonary disease: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials」、全文は、BMJ誌のWebサイトで閲覧できる。

2011. 7. 5