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漢方薬による副作用がなぜ急増したか

第34回日本中毒学会総会・学術集会(7月27〜28日,東京都)の特別講演「薬物乱用−症例報告を中毒予防に活用する」で筑波大学名誉教授の内藤裕史氏は,漢方薬長期服用による副作用事例を分析。副作用の原因となる物質を突き止めることで危険の予知・予防が可能とし,今回の講演で初めて明らかにしたという腸間膜静脈硬化症については山梔子を含有する漢方薬を3年以上服用している人には,大腸内視鏡検査を勧めるなど,対策の重要性を強調した。

副作用の症例報告1,300編を分析
 内藤氏は,1990年以降に国内の学術雑誌に掲載された漢方薬服用による副作用の症例報告約1,300編を基に,間質性肺炎,肝障害,腸間膜静脈硬化症について分析した。腸間膜静脈硬化症については今回の講演で初めて明らかにされたものだという。

 その結果,間質性肺炎を発症した274人のうち,86.1%が黄芩を含有する漢方薬(重複あり),67.5%が柴胡を含有する漢方薬,62.4%は半夏を含有する漢方薬を服用していた。肝障害は,183人中81.4%が黄芩を含有する漢方薬を服用していた。

 同氏は「黄芩(バイカリン)や柴胡(サイコサポニン)には細胞毒性があり,抗がん薬として研究が進められている。黄芩,柴胡による臓器障害は,それらが持つ細胞毒性によるものと考えられる」と指摘した。

山梔子含有漢方薬服用例で腸間膜静脈硬化症
 腸間膜静脈硬化症は,腸間膜静脈の線維性肥厚・石灰化によって起こる虚血性の腸病変で,大腸内視鏡所見で結腸粘膜が暗青色,青紫色を呈し,病変は回盲部,上行結腸に始まり横行結腸,下行結腸,直腸へと3〜10年の経過で進行する。腸間膜静脈硬化症を発症した27人中26人は山梔子を含有する漢方薬を服用していた。山梔子による副作用については2000年に「サンシシ内服による色素沈着症」との学会報告がある。

 山梔子の主成分ゲニポシドは,下部消化管で腸内細菌により分解されてゲニピンとなり,これがアミノ酸と反応して青色色素を生じ,大腸粘膜に沈着すると同時に大腸壁から静脈に流出,なんらかの機序で腸間膜静脈を硬化させ大腸の血行を阻害し,大腸の管腔狭窄,浮腫,石灰化を起こすと考えられる。

 大腸内壁の青色色素沈着はこの疾患に特有で,その程度は回盲部で最も著しく,直腸に進むにしたがい薄くなり病変も軽度になることから,回盲部から吸収された青色色素との因果関係が示唆される。

 内藤氏は「腸間膜静脈硬化症は原因不明とされるものが多いが,民間薬,生薬,ハーブ,サプリメントは服薬歴の申告や聴取から漏れがちで,こうしたものに山梔子が含まれている可能性がある」とし,「加味逍遥散など山梔子を含む漢方薬を3年間以上服用している人は,大腸内視鏡検査を勧める」と強調した。なぜなら,症状が出てから受診した人は約半数が結腸摘除術を受け,中には結腸全摘術を受ける人もいて,術後の生活に大きな支障が出るからという。

漢方薬による副作用がなぜ1990年以降に急増したのか
 内藤氏によれば,1976年,煎じ薬(湯剤)を濃縮・乾燥処理したエキス剤が健康保険の適応になった。ところが,エキス剤には成分が表示の2〜6割しか含まれていないことが分かり,旧厚生省は1985年5月の通知で,「湯剤と化学的同等性を示す資料」の提出を義務付け,1986年10月に「新しいエキス剤」が登場した。

 新しいエキス剤は古いものに比べ,成分濃度は一気に2〜5倍に上昇した。新しいエキス剤が登場したのが1986年10月で,初めての間質性肺炎の報告は1989年,新しいエキス剤による肝障害の報告も1989年で,腸管膜静脈硬化症の報告が遅れて1991年だったのは,潜伏期間が長かったためと考えられるという。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1208/1208011.html