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イチョウ葉エキスの話題

〔ロンドン〕カセラルディ病院(仏トゥールーズ)のBruno Vellas教授らは,欧州では過去最大規模となるアルツハイマー病(AD)予防に関する研究を実施し,「イチョウ葉エキスは,記憶障害のある高齢者のAD進行リスクを有意に低下させないことが分かった」とLancet Neurology(2012; 11: 851-859)に発表した。

死亡数と脳卒中リスクも有意差なし
 筆頭研究者のVellas教授らは今回,フランスで物忘れを主訴にプライマリケア医を受診した70歳以上の高齢者2,854例を対象に,イチョウ葉エキスの1日2回投与(計240mg)の効果を検討。被験者をイチョウ葉エキス投与群(1,419例)とプラセボ群(1,435例)にランダムに割り付け,5年間にわたり,標準検査を用いて患者の記憶能力,認知機能,認知症の状態を評価した。

 その結果,フォローアップできた被験者のうち,5年後にADの疑いありと診断された者は,プラセボ群の5%(73/1,406例)に対してイチョウ葉エキス投与群では4%(61/1,414例)と有意差は認められなかった(P=0.306)。また,死亡数(P=0.68)や脳卒中リスク(P=0.57)についても,両群間で有意差は認められなかった。

 今回の研究は,同様の知見が得られた米国の2009年の2試験を再現することとなった。2件の結果はいずれも,物忘れを訴える高齢者に対するイチョウ葉エキスの投与は,ADへの進行に有意な影響を及ぼさないことを示唆している。

結論出すには長期投与の追加研究が必要
 Vellas教授によると,ADが公衆衛生に及ぼす負担は増す一方で,このような状況からADに対する有効かつ安全な予防策が早急に求められている。しかし,ADに対する介入の有効性を検討したランダム化比較試験の数は限られており,今回の研究はAD予防に関する3件目の試験で,米国外で実施された初めての研究にすぎない。そのため,同教授は「今後,この分野でさらなる研究を重ねることが急務である」と述べている。

 その一方で,「われわれの試験結果は,イチョウ葉エキスの常用には高齢者をADへの進行から保護する作用がないことを示しているようだが,これは,長期投与に関する追加研究を行うまでは分からない。AD患者数は2050年までに4倍に増加すると予測されているため,直ちにADの予防療法の研究に取り組む必要があるだろう」と述べている。

 南カリフォルニア大学(USC,ロサンゼルス)アルツハイマー病研究臨床センターのLon S. Schneider所長は,同誌の付随コメント(2012; 11: 836-837)で「もしイチョウ葉エキスが栄養補助食品ではなく薬剤であったならば,ADと認知機能障害に対する有効性を調べる臨床試験は何年も前に終了していただろう。だが,イチョウ葉エキスは広く普及しており,植物由来で比較的安全であることを考えると,現時点でまだ研究数が少ないのは仕方がないことかもしれない」と説明している。また,今回の結果を踏まえ,「イチョウ葉エキスが認知症を予防するとの触れ込みからこれを服用している者がいるとすれば,残念なことである。“有効な治療法が存在しない現状において,イチョウ葉エキスは幾らかでも役立つ可能性がある”と主張する者もいるだろうが,それ以外の者は,今回の結果を知れば服用の中止を考えるのではないか」と述べている。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2012/M45490241/