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カルニチンの話題

 医師たちは長年、赤身の肉に含まれる飽和脂肪とコレステロールが心疾患リスクを上昇させると考えてきた。しかし、医学誌「ネイチャー・メディシン」の論文は別の犯人を挙げた。それはカルニチンだ。カルニチンは赤身の肉に多く含まれる化合物で、ダイエットサプリメントとしても販売されているほか、栄養ドリンクにも添加されている。

 カルニチンは通常、体内で脂肪酸を細胞に運搬するのを助ける。エネルギーとして利用されるようにするためだ。しかし、米クリーブランド・クリニックの研究チームはヒトとマウスの両方を対象にした実験で、消化管内にいる特定のバクテリアがカルニチンをTMAO(トリメチルアミンN-オキシド)と呼ばれる別の代謝物質に変え、これがアテローム性動脈硬化という動脈硬化の一種を促進させることを発見した。

 クリーブランド・クリニック・ラーナー研究所で細胞分子医学の責任者を務めるスタンレー・へーゼン博士率いる同チームは、心機能検査を受けた2595人の患者の記録を分析した。チームは血中のTMAOが多ければ多い人ほど、心血管疾患、心臓発作、それに脳卒中を発症したり、死亡したりする可能性が高いことを発見した。

 これまで長年にわたり多くの研究者が赤身の肉や加工肉の消費と心血管疾患や特定のがんとの関連を指摘してきた。例えばハーバード大学公衆衛生大学院が昨年出したリポートによると、1980年以降に追跡した看護師8万3000人と男性の医療従事者3万7000人のうち、赤身肉の消費水準が最も多かった人々の死亡リスクが最も高く、赤身肉の消費量を1回分(1サービング)増やすと、死亡リスクが13%上がった。

 一部の研究者は、こうした死亡リスクの上昇は、赤身肉の中の飽和脂肪とコレステロールですべて説明できるリスクよりも高いと考えてきた。

 そこでへーゼン博士は、カルニチンがその死亡リスクを増大させるとの仮説を立てた。同博士は「動脈を詰まらせるのにコレステロールは依然として必要だが、TMAOはコレステロールの代謝のされ方を変える。まるで照明の調節スイッチのように、だ」と述べ、「これにより、悪玉コレステロール(LDL、コレステロールの一種)の水準が同等だが、心血管疾患を発症する人としない人がいることを説明できるかもしれない」と付け加えた。

 同博士によれば、意外な発見の1つは、長期的な食事パターンが消化管内のTMAO生成バクテリアの量に影響を与え、ひいてはリスクを増幅させることだった。研究によると、長期間何でも摂取する雑食性の人が8オンス(約226グラム)のステーキとカルニチンのサプリメントを摂取すると、バクテリアとTMAOの水準がともに大幅に上昇した。しかし、完全菜食主義者が自発的に同じ食事とサプリメントを摂取しても、TMAOとバクテリアの量は全く増えなかった。

 へーゼン博士は「完全菜食主義者は基本的にカルニチンを消化する能力を失っている」と指摘した。

 この研究は、米国立衛生研究所から資金援助を受けたものだが、赤身肉を最低どのくらい食べてもTMAOの値が上昇するのか査定していない。また、この代謝プロセスを止めるために赤身肉をどれくらい長期にわたって控えなければならないのかについても調べていない。へーゼン博士は「われわれは(赤身の肉を控えるべき期間が)1週間より長いが、1年よりは短いだろうと承知している」と述べた。

 同博士らは、こういったバクテリアが心疾患リスクにどれほど影響をもたらすかについて研究している。同博士は「将来的には、心臓にやさしいヨーグルトやTMAOの生成を妨げる薬品が開発されるかもしれない」と話した。

 これに対し、精肉業界団体は、赤身肉と心血管疾患との関連を疑問視している。今回の研究では長期的に摂取したものを思い出すよう人々に求めているため、内容が不正確だとの観点からだ。

 サプリメントとしてのカルニチンは、米食品医薬品局(FDA)から「一般的に安全とみられる」と指定されているが、長期的にその安全性を調べた研究はほとんどない。2006年のリスク評価によると、1日2000ミリグラムのカルニチンを6カ月間摂取しても、有害事象は確認されなかった。

 サプリメントの広告はカルニチンが活力を高めるとうたっており、とりわけ持久力を要するスポーツで、激しい運動の後の回復を助けると述べている。一部の広告は、腹部の脂肪減少、体重減、それに脳機能の向上を助けるとまで主張している。

 サプリメントと栄養ドリンクの業界団体「Council for Responsible Nutrition」の副代表ダフィー・マッケー氏は、今回のネイチャー掲載の研究論文結果が「新しく浮上し始めたばかりの仮説」だと述べた上で、研究者らがマウス、バクテリア、それにヒトのバイオマーカーを用いた小規模の研究で大きな結論を導き出していると批判した。

 同氏は「食事の一部分、ないし1つの分子がヒトの健康問題に責任があるという考え方には疑問の余地がある」と述べた。

 へーゼン博士は一部の栄養ドリンクについて、1缶に含まれるカルニチンの量がポーターハウスステーキ(サーロインを大きく切った最上のビーフステーキ)の1枚に含まれる量を上回る場合があると指摘し、「10年、20年、30年と摂取した場合に何が起こるかを懸念している」と話した。

 同博士によると、ヒトは通常食事を通して大量のカルニチンを摂取しており、サプリメントとして取る必要はないという。カルニチンはナッツ、豆、野菜、それに果物にも少量含まれている。

http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323366004578409601491494018.html

(医薬品機構のホームページを検索すると、日本の市販薬241品目が該当しリポビタンFBなどの栄養ドリンク剤のほかソルマックなど胃腸薬にもカルニチンが配合されています。医療用医薬品では4品目が発売されています。ご心配があれば薬剤師に相談してください。)