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急性薬物中毒の後ろ向き調査

急性薬物中毒の後ろ向き調査

 神戸市立医療センター中央市民病院救命救急センターの杉村朋子氏らは,同センター救急外来を受診した高齢者の急性薬物中毒の要因を後ろ向きに検討した結果,より重篤となるのは尿中スクリーニングキットで検出される睡眠薬や抗うつ薬よりも,検出されない循環器系薬や抗てんかん薬などの定期内服薬であることを明らかにし,第42回日本救急医学会総会・学術集会(10月28〜30日,会長=久留米大学病院病院長,同大学救急医学講座主任教授・坂本照夫氏)のパネルディスカッション「高齢者の救急医学〜新たな知見」で報告した。
処方薬を自己管理しADLが自立した高齢者に多い傾向

 同センター救急外来で急性薬物中毒と診断された高齢患者の中には,故意による過量服用の結果ではなく事故的に起こった重篤な薬物中毒例が多いことから,杉村氏らは高齢者の薬物中毒の傾向を調査した。

 対象は, 2009〜13年に同センター救急外来で薬物中毒と診断された65歳以上の72例(男性28例,女性44例,年齢中央値77.0歳)。そのうち,定期内服薬による事故は32例(平均服薬数5.8剤)であり,高齢になるほど「故意」より「事故」の方が多くなった〔65〜74歳は8例(故意23例),75〜84歳は16例(同14例),85歳以上は8例(同3例)〕。また,処方薬を自己管理している日常生活動作(ADL)が自立した高齢者に定期内服薬による事故が多い傾向が見られた。

 最も多い主訴は意識障害であり,次いで脱力,ショック,傾眠および倦怠感,嘔気などの順に多く,85歳以上ではショックや高度意識障害などの重篤例が認められた。事故例における中毒の原因薬剤としては,ベンゾジアゼピン系薬,循環器系薬(ジギタリス,Ca拮抗薬,β遮断薬など),抗てんかん薬(フェニトインやバルプロ酸など),テオフィリン,三環系抗うつ薬,サリチル酸,アシクロビルが挙げられ,重篤例の多くは循環系薬や抗てんかん薬の服用者であった。
腎機能低下により薬物相互作用が増強

 杉村氏によると,薬物中毒事故の原因として,相互作用に注意を要する薬剤を服用中の高齢者が,加齢そのものによる腎機能低下に加え,非ステロイド抗炎症薬(NSAID)を服用したり,脱水状態にあったりすると,腎機能がさらに低下して薬理作用が増強し徐脈や血圧低下,意識障害などの薬物中毒症状を来すことが挙げられるという。

 なお,事故例の平均糸球体濾過率(GFR)は49.5mL/分/1.73m2と明らかに低下しており(図),これにより薬物相互作用の増強や代謝・排泄作用の低下が引き起こされるため,増量せずとも定期内服薬で中毒が生じやすい状態にある。

 睡眠薬や抗うつ薬はもとより,尿中スクリーニングキットで検出されない循環器系薬や抗てんかん薬は特に注意が必要であり,服薬管理を自ら行う独居高齢者の死亡の原因になりうると同氏は述べ,注意を喚起した。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1411/1411004.html