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英の“Choosing Wisely”は「医師による医療の無駄遣い」削減から 医師のためのガイドを発表

英の“Choosing Wisely”は「医師による医療の無駄遣い」削減から
医師のためのガイドを発表

 英Academy of Medical Royal Collegesは11月6日,「医療資源を守り,質を高めるために:診療のムダ削減のドクターズガイド(Protecting resources, promoting value: a doctor’s guide to cutting waste in clinical care)」と題する報告書を発表した。国民医療制度の維持が困難な状況を迎えつつある中,医療の質を保つために医師が中心となって「医療の無駄遣い」を削減すべきと提言。その枠組みを示している。米国を皮切りに各国で,必要性の低い診療行為を減らそうとの医師・患者への啓発キャンペーン(Choosing Wisely)が始まっているが,同ガイドはまず医師が医療の無駄遣い減少に取り組むことを強調。専門家団体の各領域におけるChoosing Wisely作成などは,今後取り組むべき課題として示されている。
84歳のWilliamsさんの「患者の旅」で生じた具体例を提示

 同レポートでは「医療の無駄遣い」を「医療資源の不適切使用」と定義,こうした無駄遣いは実施臨床に直接関連しており,医療資源を用いる素養を最も有する医師自身がまずその減少に取り組む必要があると説明。実地臨床における医療の無駄遣いを包括的に減らすことが他の医療サービスへのリソース配分の継続を可能にすると強調している。

 レポートでは個別の診療場面では見えにくい医療の無駄遣いを「患者の旅」と題したフローチャートで提示。糖尿病と高血圧,そして初期の認知症を有する84歳のWilliamsさんが認知機能の低下に伴う降圧薬の飲み忘れの増加で血圧管理が悪化,自宅で転倒。救急部門に搬送され,大腿骨頸部骨折と診断,手術治療とリハビリテーションを経て地域のナーシングホームに入所したものの,専門的なケアが受けられず容態が悪化したためにかかりつけ医が医療機関への再入院を検討するまでの経緯を記載。その間の医師の判断や医療行為に伴う「血液検査の不適切な過剰使用」や「回避できた入院」「上級医への相談や手術器具の準備の不備に伴う手術開始の遅延」などの「無駄遣い」事例と,それぞれの課題に対する各病院の取り組みと成果を示している。

 同ガイドでは,米国の検討において主要な日常診療行為の20%程度が患者にベネフィットをもたらしていないとの報告があること,英国では年間約3億ポンド相当の処方せん薬が廃棄されているとの報告なども紹介。「医療の無駄遣い」を減らすことで実際に英国保健サービス(NHS)のサービスの質が改善するかは今回のレポートで検討されていないとしながらも,医療資源の適正使用が実地臨床の中心となる必要があると述べている。
入院1回で446kgのCO2が排出?!「医療の無駄遣いは環境にも負担」

 「医療の無駄遣い」という言葉だけではすぐに想像できないが,今回のガイドは「患者の旅」に伴う金銭的なコストだけでなく,環境コストの推計量も提示。Williamsさんが経験した「患者の旅」の場合,「飲み忘れた4カ月分の処方せん薬」により二酸化炭素換算で15kgCO2e2,救急車要請では68kgCO2e2,医療機関への入院1回につき446kgCO2e2の温室効果ガスが排出されていると試算されている。「医療の無駄遣い」は環境コストにもつながり,温室効果ガスのほとんどは医療機関の室温調節や照明ではなく診療活動に伴い発生していると同ガイドでは述べられている。

 「医療の無駄遣い」減少への取り組みは医師にとって新しい話題ではないが,「医療現場での“無駄遣い”減少により,医療の質改善,コスト削減だけでなくCO2排出の減少と3つの問題を解決していく義務がある」と積極的な取り組みを呼びかけている。

 今回のガイドは医師に対し,医療の無駄遣い減少への取り組みを勧告した他,Academy of Medical Royal Collegeや専門医団体の責務として,それぞれの領域での「無駄遣い」を発見し解決する仕組みづくりを勧告。英国立臨床評価研究所(NICE)が構築している「べからず集(“do not do”recommendation)」の活用やChoosing Wiselyリストの作成などを求めている。

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