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亜鉛サプリの過剰摂取に注意

銅欠乏を惹起,貧血や神経症状のリスクも
 亜鉛は健康維持に重要な必須微量元素で,サプリメントの使用者も多い。しかし,英・Glasgow Royal InfirmaryのAndrew Duncan氏らが亜鉛サプリメントを処方された患者の診療記録を分析したところ,多くの患者にサプリメントが過剰投与されていること,また患者の中には亜鉛の過剰摂取による銅欠乏が関連している可能性のある神経症状や貧血の発症例がいることが分かった。J Clin Pathol(2015年6月17日オンライン版)で報告した。小規模研究でデータも不十分であるため因果関係は不明だが,同氏らは「亜鉛の過剰摂取による銅欠乏のリスクを認識すべき」と呼びかけている。

亜鉛欠乏症の診断基準値なく二次的に血中濃度低下することも

 亜鉛は,英国では1日に男性は5.5〜9.5mg,女性は4〜7mg摂取することが推奨されている※。しかし,一般に流通している亜鉛サプリメント製品は1錠当たり40mgまたは50mg含有のものが大半だという。

 Duncan氏らは「亜鉛を過剰に摂取すると,銅や鉄の吸収が阻害されて貧血や好中球減少症が引き起こされ,さらに神経症状といった重篤な症状の原因となる可能性もある」と説明。また,亜鉛欠乏症は血中の亜鉛値に基づき診断されることが多いが,亜鉛を処方すべき基準を示したガイドラインはない。さらに全身性炎症反応(SIR)や血中アルブミン濃度の低下などにより二次的に血中の亜鉛値が低下する場合もある。こうしたことから,血中の亜鉛値のみでは正確に亜鉛欠乏症を診断できない可能性があるという。

 同氏らは今回,グラスゴーの病院で2000〜10年に亜鉛サプリメントを処方された患者70例の診療記録を分析した。血液検査データを入手できた例については血中の亜鉛,銅,アルブミン,C反応性蛋白(CRP)の値も確認。血中アルブミン25g/L未満,CRP 20mg/L超を二次的な血中亜鉛値の低下に関連する基準値とした。

70例中9例に貧血,好中球減少症,神経症状

 分析の結果,45例(60%)に90〜180mg/日の亜鉛が処方されていた。亜鉛が処方された理由で最も多かったのは「亜鉛欠乏」で,21例だった。次いで褥瘡や下肢潰瘍などの皮膚症状(19例),低栄養(4例)が続いた。なお,29例で処方の理由に関する記録がなかった。

 また,亜鉛が処方される前に血中の亜鉛値が測定されていたのは43例(61%)で,このうち37例が低値と判定されていた。しかし,亜鉛低値例のうち28例(76%)はアルブミン低値またはSIRによる影響と考えられた。

 一方,血中の銅の濃度が測定されていたのは2例のみだった。また,70例中9例で銅の欠乏に関連している可能性のある貧血,好中球減少症,神経症状などの症状があった。ただし,Duncan氏らは「これらの症状が発症した時期や亜鉛サプリメントの使用期間に関するデータが入手できなかったため,亜鉛の過剰摂取に起因した銅欠乏によるものか否かは明らかにできなかった」と説明している。

 その上で,同氏らは「銅欠乏に起因した貧血や好中球減少症が看過されると,不可逆的な神経症状に進行してしまう可能性がある」と指摘。亜鉛欠乏症を正確に診断するためには血中の亜鉛値だけでなくCRP値なども確認することや,銅欠乏を回避するために亜鉛サプリメントの処方量は45mg/日以下にとどめること,サプリメントを長期使用する場合には血中の銅の濃度も確認することを勧めている。

※ 「日本人の食事摂取基準2015年版」では亜鉛の食事摂取基準(1日当たり)は15〜69歳の男性10mg,同年齢の女性で8mg,耐容上限量はそれぞれ40〜45mg,35mgとされている

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2015/M48280202/