最新情報
 

高血圧学会総会 高齢者への降圧剤治療、「是非」巡り議論

高血圧学会総会 高齢者への降圧剤治療、「是非」巡り議論
 9〜11日に愛媛県松山市で開催された第38回日本高血圧学会総会では、高齢者の降圧剤治療を巡る議論が目立った。高血圧学会が14年に公表した最新のガイドライン(GL)では、75歳以上の高齢者の降圧目標値を「140/90mmHg未満」から「150/90mmHg未満」に引き上げたが、欧米のGLは、すでに60歳以上という早い段階で「150/90mmHg未満」を推奨している。降圧剤で過剰に血圧を下げる(過降圧)と、心身が弱って日常生活に支障を来たしたりするなど、認知機能が低下するリスクがあるとの報告が世界的に増えており、総会でも、そうした発表がいくつもあった。

 金沢医科大学の入谷敦氏は65歳以上で降圧剤治療を受けていた高齢者576例を4年間観察した結果、受けていなかった人よりも要介護支援認定(62例)が多く、血圧が極端に高い群だけでなく、低い群でも、認定率が高かったことを強調。「高齢者に対する過降圧は、フレイル(心身機能の低下)につながる恐れがある」と述べた。

 また、世界的に著明な研究者であるメジョン・ミュラー氏の提言を紹介。80歳以上で心身が弱っている場合は、脳卒中や心不全を起こした人でない限り、「降圧剤を投与すべきではない」としているほか、当初は健常でも、治療中に心身が弱ってきた場合は「投薬の中止を考慮すべき」としている点に注意を呼び掛けた。

 国立病院機構愛媛医療センターの小原克彦氏は、世界認知症評議会(WDC)が最近公表したレポートを紹介。同レポートは、高齢者に対する高血圧治療は、認知機能低下につながる恐れがあるだけでなく、逆に高血圧が認知機能の低下を予防する可能性があると示唆している。また、認知症の高齢者に対する降圧剤治療の有用性を主張する見解があることは認めているものの、大規模臨床研究での裏付けがないため、「結論は出てない」と言い切っている。小原氏は「しっかりした有用性のエビデンスができるまでは、フレイルの後期高齢者に対する降圧剤投与はミュラー氏の言うように慎重にすべきだろう」と述べた。

 一方で、自治医科大学の江口和男氏は、海外の大規模臨床試験で、後期高齢者を対象に積極的な降圧剤治療を実施した結果、脳卒中が減少し、全死亡率は変わらなかったという事例や、自ら実施した研究結果を紹介したうえで、「起立性低血圧や転倒がなければ後期高齢者でも、脳卒中予防の観点から、『140/90mmHg未満』をめざして治療してもいいと考える」との見解を示した。

 高齢者だけにターゲットを絞った降圧剤治療は、現時点ではエビデンスが十分とは言えず、今後も国内外で引き続き議論を呼びそうだ。研究では心身機能の低下を「フレイル」という新語で表現するようになっているが、「フレイル」そのものの定義も固まっておらず、使い方にズレがある。早期に共通認識を図ることも課題になりそうだ。今回の総会参加者は主催者発表ベースで約1600人。