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プロトンポンプ阻害薬(PPI)使用と慢性腎臓病(CKD)発症リスク

 米・Johns Hopkins UniversityのMorgan E. Grams氏らは,約1万人を対象としたコホート研究の結果,プロトンポンプ阻害薬(PPI)使用と慢性腎臓病(CKD)発症リスク上昇との有意な関連が認められたとJAMA Intern Med(2016年1月11日オンライン版)で報告した。両者の関連は各種因子で補正後も維持され,1日1回服用より1日2回服用でCKDリスクはさらに上昇した。

約1万人の研究結果を25万人の保険請求データで検証

 PPIは全世界で広く使用されており,米国では最も多く処方されている薬剤の1つだが,その処方の25〜70%は不適切な可能性があるとする研究報告が数年前から存在する。
 これまでの観察研究で,同薬と股関節骨折,市中肺炎などの感染症,急性腎損傷,急性間質性腎炎との関連が報告されているが,PPI使用とCKDリスクの関連を検討した住民研究は存在しなかった。
 今回の研究では,45〜64歳の米国人を対象とした長期住民研究Atherosclerosis Risk in Communities(ARIC)における1万482人分の自己申告PPI使用データを用いて一般人口におけるPPI使用とCKD発症の関連を定量化。さらに,ペンシルベニア州の大手健康保険制度Geisinger Health Systemの外来PPI処方データ24万8,751人分(以下,検証群)を用い,中央値で6年追跡して,ARIC研究の結果を検証した。
両コホートともPPI使用者でCKDが有意に上昇

 ARIC研究における平均(SD)年齢は63.0(5.6)歳で,43.9%が男性であった。PPI使用者では,非使用者と比べ白人,肥満,降圧薬使用が多かった。
 中央値約13.9年の追跡期間中に,ベースラインのPPI使用者322人のうち56人(1,000人年当たり14.2人),非使用者1万160人のうち1,382人(同10.7人)がCKDを発症した。人口統計学的背景,社会経済学的背景,臨床変数を調整前と調整後のモデルのいずれでも,PPI使用はCKD発症と関連していた〔調整前ハザード比(HR)1.45,95%CI 1.11〜1.90,調整後HR 1.50,同1.14〜1.96〕。PPI使用を時間依存性変数としたモデルでも両者の相関は維持された(調整後HR 1.35,同1.17〜1.55)。
 さらに,PPI使用者とH2受容体拮抗薬使用者を直接比較した解析,PPI使用者と傾向スコアを一致させた非使用者を比較した解析においてもPPIとCKDリスクの相関は維持された(それぞれ調整後HR 1.39,95%CI 1.01〜1.91,同1.76,1.13〜2.74)。CKD発症の10年絶対リスクは,PPI群が11.8%,PPI非使用群が8.5%であった。
 検証群でも全ての解析でPPIとCKDの関連が認められた。例えば,PPI使用を時間依存性変数としたモデルでの調整後HRは1.24(95%CI 1.20〜1.28)であった。また,1日1回服用(調整後HR 1.15,95%CI 1.09〜1.21)より1日2回服用(同1.46,1.28〜1.67)でCKDリスクはさらに上昇した。
便益とリスクを天秤にかけ不適切な使用を減らすべき

 今回の研究は観察研究であり,PPI使用とCKD高リスクの因果関係を示すものではなく,PPI処方患者で,その使用とは関係なくCKDリスクが高かった可能性も考えられる。しかし,同薬が非常に広く使用されていることを考えれば,両者に因果関係がある場合,公衆衛生に多大な影響を与える可能性がある。Grams氏らは「PPIが腎疾患の原因であるか否かを特定するために,さらなる研究が必要である」と指摘している。
 米国では2013年に1,500万人以上にPPIが処方されており,金額にして100億ドル以上になる。米・University of California, San FranciscoのAdam Jacob SchoenfeldとDeborah Gradyの両氏は同誌の付随論評(2016年1月11日オンライン版)で,最近の研究においてPPI使用が実にさまざまな有害事象と関連付けられていることを紹介し,「多くの患者が明確な理由もなくPPIを服用している。そうした患者では,その症状の治療が本当に必要か否かを判断するためにもPPIを中止すべきである」と指摘している。

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