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ベンゾジアゼピンは認知症リスクを上昇させない BMJ

ベンゾジアゼピンは認知症リスクを上昇させない
10 年間の処方量が多かった群の認知症発生率に有意差なし
高齢者に対するベンゾジアゼピン系薬の処方は認知症リスクを高めるのではないかと心配されていたが、米 Washington 大学の Shelly L Gray 氏らは、薬剤と認知症の因果関係に否定的な研究結果を報告した。米国の高齢者を対象とした同氏らの前向きコホート研究の結果は、BMJ 誌電子版に2016 年 2 月 2 日に掲載された。
近年、薬剤の長期使用が高齢者の認知機能に及ぼす影響について検討する研究が複数行われたが、一貫した結果は得られていない。そこで著者らは、ベンゾジアゼピンの累積投与量が高まるにつれて、認知症リスクまたは認知機能低下の速度が上昇するかどうかを調べる前向きコホート研究を実施した。
対象は、米国 Seattle の総合医療提供システム Group Health で行われた Adult Changes in
Thought(ACT)スタディに、1994〜96 年までと 2000〜03 年までに登録された、または 2004 年以降に継続的に登録された高齢者。ベースライン時点の年齢が 65 歳以上で、認知症ではなく、10 年以上にわたって Group Health を利用しており服薬歴が明らかだった人のデータを追跡して分析した。
認知症かどうかの判断には、認知機能スクリーニング検査(CASI)を用いた。検査はベースラインと、それ以降 2 年ごとに実施。CASI のスコアは 0〜100 の範囲で、高スコアほど認知機能が良好であることを示す。スコア 85 以下だった高齢者には、認知症診断のための標準的な検査を実施した。
認知症とアルツハイマー病の診断には標準的な診断基準を用いた。認知機能の経時的な変化の評価にも、CASI を用いた。追跡期間は、認知症診断時まで、Group Health の利用を止めるまで、もしくは 2012 年 9 月 30 日以前の最後の受診まで行った。
ベンゾジアゼピン系薬剤および GABA 受容体に結合する非ベンゾジアゼピン系睡眠薬に対する曝露量は、調剤データに基づいて推定し、10 年間に処方された用量の合計が標準化 1 日用量(SDD)の何日分(TSDDs)に相当するかを計算した。なお、認知症の前駆症状に対する処方であった可能性があるため、追跡終了前 1 年間の処方は分析から除外した。従って、典型的な高齢者では、追跡終了の 11 年前から 1 年前までの曝露量を分析に用いた。TSDDs を用いて、ベンゾジアゼピン系薬剤の曝露レベルで高齢者を 4 群に層別化した。非使用者、TSDDs が 1〜30 日の低暴露群、31〜120 日の中等度暴露群、121 日以上の高暴露群で、高暴露群の TSDDs の中央値は 375 だった。
全体では 30%の高齢者が、10 年間に 1 回以上ベンゾジアゼピン系の処方を受けていた。ヘビーユーザーとベンゾジアゼピン系薬剤を処方されていない人を比べると、女性が多く、抑うつ症状が強く、脳卒中や冠動脈疾患などの合併症がある患者に多かった。最も多く処方されていたのはテマゼパムで、続いて、ジアゼパム、クロナゼパム、トリアゾラム、ロラゼパムとなっており、これらを合計すると処方全体の 83%を占めていた。
対象者 3434 人の平均追跡期間は 7.3 年で、ベースラインの CASI スコアの平均は 93.4 だった。2万 5019 人・年の追跡期間中に、797 人(23.2%)が認知症を発症、うち 637 人はアルツハイマー病と診断されていた。ベンゾジアゼピン非使用者を対照として、ベンゾジアゼピンの累積投与量との関係を調べたところ、低暴露群の認知症のハザード比は 1.25(95%信頼区間 1.03-1.51)、中等度暴露群では 1.31(1.00-1.71)、高暴露群では 1.07(0.82-1.39)だった。高暴露群をさらに層別化して分析した
が、TSDDs が 121〜364 日群のハザード比は 1.11(0.78-1.58)、365 日以上群も 1.03(0.73-1.44)で、有意な値にならなかった。
アルツハイマー病について同様に分析したところ、低暴露群のみリスク上昇が有意になった(ハザード比 1.27、1.03-1.57)。中等度暴露群のハザード比は 1.16(0.84-1.60)、高暴露群では 0.95(0.71-1.27)だった。
CASI スコアの減尐速度でベンゾジアゼピン曝露量と認知機能の経時的な変化の関係も調べたが、高暴露群と非使用者を比較すると 1 年当たりのスコア減尐速度は 0.002 点(95%信頼区間-0.05 から0.06)で、差は見られなかった。
ベンゾジアゼピン曝露レベルが低かった人々の認知症リスクは、小さいが有意に上昇していた。一方で曝露レベルが最も高かった集団に、有意なリスク上昇は見られなかったため、ベンゾジアゼピンの使用と認知症の間に直接の因果関係はないことが示唆されると著者らは結論している。