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死亡診断「肺炎」の 7 割が直接の死因は衰弱や老衰

死亡診断「肺炎」の 7 割が直接の死因は衰弱や老衰
死亡診断書の死因病名が「肺炎」「誤嚥性肺炎」とされていた症例の約 7 割は、実際には肺炎が直接の死因ではなく、加齢性変化による衰弱などによって死亡している――。三重県立総合医療センター呼吸器内科の寺島俊和氏が、4 月 21〜23 日に都内で開催された第 57 回日本呼吸器学会学術講演会で発表した。
肺炎は日本人の死因第 3 位で、今後も増加の一途をたどることが予想されている。だが死因が「肺炎」とされていても、背景には様々な要因がある。直接の死因は肺炎以外にあることも少なくないが、その実態は不明だ。そこで寺島氏は、肺炎と診断されて入院による治療を行い、入院中に「肺炎死」とされたケースについて、肺炎の重症度や原因菌、基礎疾患などについてカルテから後方視的に分析した上で、実際の死因について検討した。対象は、2012 年 1 月から 2015 年 12 月の 4 年間に同病院呼吸器内科で肺炎の入院治療を受け、入院中に死亡した症例のうち、死亡診断書の死因(直接死因)が「肺炎」「誤嚥性肺炎」だった 74 例(男性55 例、女性 19 例)。間質性肺炎や腫瘍関連肺炎で亡くなった例は含めなかった。
死亡した 74 例のうち 91%が 75 歳以上(平均年齢は 82.9 歳)で、全身状態が低下したPS(performance status)3、4 のケースが 54%を占めた。肺炎の分類では、医療・介護関連肺炎(NHCAP)が 61%(45 例)が最も多く、市中肺炎(CAP)が 34%(25 例)、院内肺炎(HAP)が 5%(4 例)。対象者の多くが重症で、肺炎の重症度を評価する指標である A-DROP(0〜5 点)では 3 点以上が65%(平均 2.97 点)、PSI(I〜V の 5 段階)では最重症であるクラス V が 53%、IV が 40%だった。
基礎疾患として最も多かったのは慢性呼吸器疾患の 38 例で、認知症(18 例)、慢性心不全(14 例)、脳血管障害(13 例)が続いた(重複あり)。慢性呼吸器疾患 38 例の内訳は、COPD(16 例)、結核後遺症(6 例)、肺癌、間質性肺炎、肺アスペルギルス症、気腫合併肺線維症(各 4 例)などだった。喀痰培養では、MRSA(13 例)、肺炎球菌(9 例)が多かった。
死因を分析する際、(1)菌血症(菌血症によるショック、DIC、多臓器不全などでの死亡)、(2)広範浸潤影による呼吸不全(肺炎悪化による広範浸潤影での呼吸不全死)、の 2 つを狭義の「肺炎死」とした。
一方で、狭義の「肺炎死」以外の死亡として、(1)衰弱死(解熱や血液検査データの改善、胸部 X 線陰影の改善が認められるなど、肺炎の治療に奏功しながらも呼吸筋疲労での呼吸停止など、肺炎治療中の衰弱としか説明のできない死亡)、(2)窒息死(肺炎治療中の窒息死)、(3)肺炎治療後の老衰死(肺炎は改善し、肺炎治療は終了したが、経口摂取不能などでの老衰死)、(4)心不全の併発、(5)無治療例(主に、終末期などで治療を希望しなかった例)、(6)その他――の 6 項目を挙げた。
対象者 74 例の直接の死因がそれぞれどの分類に当てはまるかを検討した結果、狭義の「肺炎死」に該当した例は 31%に過ぎず、70%近くが肺炎以外の理由で死亡していた。衰弱、老衰、窒息など、加齢性変化の影響が大きいことが分かった。
死因の具体的な内訳は、狭義の「肺炎死」では菌血症が 9 例、広範浸潤影による呼吸不全が 15 例だった。「肺炎死」以外の死因としては、衰弱死 13 例、窒息死 8 例、肺炎治療後の老衰死 10 例、心不全の併発 3 例、無治療 9 例、その他 3 例(癌終末期、けいれんによる突然の呼吸停止)だった。「これは急性期病院の現状なので、日本国内全体でみたら、狭義の『肺炎死』以外の原因で亡くなっているケースはもっと多いだろう」と寺島氏は分析する。
こうした結果から寺島氏は、「感染症としての肺炎による死亡は実際には少なく、加齢性変化による衰弱などが直接の原因となり死亡しているケースが多いことが改めて示された。肺炎患者への治療は抗菌薬投与による感染症の制御だけでは完結できず、栄養状態の改善など全身状態を見据えた対応が欠かせないだろう」と話している。