• 日の出薬局 薬剤師の勤務
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        薬の効き方
     
    人体は 60 兆個くらいの細胞で構成されています。臓器や筋肉、骨、皮膚、神経、血管などはすべて細胞の集合体で、これを組織と呼びます。すべての細胞は各種ホルモンや化学物質からの情報を受け取り、組織内で定められた役割を果たしています。
    細胞には、受容体(レセプター)と呼ばれる蛋白質が存在して、物理・化学的な刺激を認識して細胞に応答を誘起します。このとき細胞に応答を誘起させるような、薬剤を含む情報伝達物質を、リガンドと呼びます。
    細胞のレセプターは一種の「鍵穴」のようなものであり、細胞に刺激を与える物質、リガンドはそれに対する「鍵」のようなものと理解することができます。
    細胞はレセプターからの信号を認識すると、その応答として、細胞分裂、増殖、細胞死、また体内の化学物質の制御に影響を及ぼすことで患部の治療効果を発揮します。

    では、薬は体内に入ってからどのような動きがあるのでしょうか。
    一般的に多く処方される内服薬(飲み薬)を例に考えてみます。
    薬を飲むと、吸収⇒分布⇒代謝⇒排泄 という流れの中で効果を発揮します。


    吸収
    薬は口から食道経由で胃に送られます。胃で消化作用を受けた後、小腸に入って小腸で吸収されます。小腸で吸収された薬は、循環血中へ移行します。小腸には粘膜に多数のひだがありそのひだ上に無数の絨毛と言う毛が出ているため、表面積が大きく吸収されやすい構造となっています。

    分布
    循環血中から薬効を示す組織( 患部 )へ移行する過程です。薬物が移行する際には門脈という太い血管を通って肝臓を通ります。
    肝臓は人体に入ってくる有害物質( 異物 ) の解毒作用をする臓器ですが、人体にとっては薬も一種の異物にあたるため、まず肝臓で分解解毒作用を受けることになります。服用された薬が全部、分解解毒されてしまっては薬の役を果たさなくなってしまいます。この問題をクリアするために、肝臓の分解能力より多い量の薬を服用するのです。肝臓で分解されずに残った薬は血流に戻り、全身を巡って患部に到達してその薬本来の治療効果を発揮することになります。心臓病の薬は心臓、うつ病の薬は脳に行かないと意味がありません。

    代謝
    薬は体内にとって異物だと先ほど述べました。代謝とは薬が体にとって害のないものに変わる過程です。
    薬物は主に肝臓の酵素による酸化・還元・加水分解によって代謝されます。その酵素として代表的なものがシトクロムP450( CYP )というものです。なぜこの酵素が重要であるかと言うと、薬物代謝に関わる物質のうち CYP が全体の約 9 割を占めているからです。

    薬は種類によって代謝される速度が速い場合と遅い場合があります。代謝が速いと薬の効果も素早く消失してしまいます。そのため、薬の効果を持続させるためには何回も薬を服用する必要があります。内服ならば良いですが、注射薬や特殊な薬の場合は患者さんの負担が大きくかかってしまいます。
    その代わりすぐに薬が体から消失するため、副作用が起こった場合は有害な影響を最小限に抑えられます。

    代謝される速度が遅い薬であれば、薬を投与する回数が少なくて済みます。そのため、服用のしやすさが大幅に向上します。
    ただし、この場合は副作用が発生した時に問題となります。有害事象が起こって薬を止めたとしても、代謝・排泄速度が遅いので薬の作用が長い間続くことになります。
    そのため、副作用から回復するためには何日もの時間が必要となります。

    排泄
    薬物の排泄を行う上で最も重要となる器官が腎臓です。尿と一緒に薬物を排出することにより、体外へと排泄することができます。
    薬が体の中に入った後、二つの形が存在します。一つは肝臓によって代謝を受けた後の代謝物、そしてもう一つは、肝臓によって代謝を受けていない薬として作用する未変化体です。
    未変化体は薬としての作用を表します。

    肝臓では主に薬物代謝が重要となりますが、腎臓で行われる尿排泄と同じように、肝臓でも薬物の排泄が行われます。この時の肝臓による排泄機構として胆汁排泄があります。
    胆汁は肝臓で作られる消化液です。薬物がこの胆汁と共に小腸などの消化管へと排泄されることがあります。
    薬が胆汁と共に消化管へ排泄されると、そのまま糞便と一緒に外へ排泄されます。糞便と一緒に排泄されるので糞中排泄とも呼ばれます。このように、薬物の排泄機構としては腎排泄と胆汁排泄の二種類があります。







    薬を飲むタイミング
    一般的に最も多い服用時間は食後ですが、薬によっては飲むタイミングが違うものもたくさんあります。

    食前:吐き気止めや、食事の前に服用した方が吸収が良く、期待する薬の効果を発揮したい場
    合などに適応されます。例)制吐剤、漢方薬

    食直後:食事をとってすぐに投与します。
    例)副作用軽減(胃腸障害)のための解熱鎮痛剤など。

    食直前:食事する直前。空腹時投与による低血糖を防ぐため、経口血糖降下薬などでよく用いられる投与方法です。

    食 間:食後 2 時間。空腹時に服用した方が吸収もよく、効果を発揮できる薬剤に使用されます。例)胃粘膜保護剤(マーロックス、アルロイド G など)、コレバイン

    就寝前:寝る前に服用する方法です。夜間や朝方に効果を発揮させたい場合などに使用されます。
    例)睡眠導入剤、下剤、喘息治療剤、など

    これをみると、空腹時に薬を飲むと効果が最も良く出るものもあれば、副作用が出やすくなってしまうものもありますね。


    薬には様々な剤形(薬の形)があります
    たとえば、飲み薬では錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、トローチ剤があります。


    錠剤とは、経口投与する、一定の形状の固形製剤のことです。錠剤の特徴は、取り扱いが簡単であることです。錠剤は、更に、口腔内崩壊錠、チュアブル錠、発泡錠、分散錠、溶解錠に分類されます。
    口腔内崩壊錠は、口の中で速やかに溶ける錠剤のことです。
    チュアブル錠は、噛み砕いて飲む錠剤のことです。
    発泡錠は、水中で急速に発泡する錠剤のことです。
    分散錠は、水に入れて、分散させて飲む錠剤のことです。
    溶解錠は、水に溶かして飲む錠剤です。


    カプセル剤とは、薬をカプセルで包んである薬のことです。カプセル剤の特徴は、不快な味や臭いを防ぐことができる点です。硬カプセル剤と、軟カプセル剤があります。


    顆粒剤とは、粒状に造粒した製剤です。顆粒剤の特徴は、散剤と比べ、容器などへの付着性が低いことです。また、適切なコーティング剤を用いることで、様々な性質を付与することが可能です。

    散剤とは、粉末状の製剤です。散剤の特徴は、細かい投与量の調節が可能であることです。
    飲み込む力の低い、小さな子どもや老人にも使用可能です。

    トローチ剤は、口腔内に適用する製剤です。